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それで古代からこの環境がどう変わってきたかということで、例えば日本の場合でも植物の変化というのが時代によって違うのです。今生えているものは昔から生えているように思うけれども、そうではない。時代時代によって植物の種類が違ってくるということがわかっているわけです。
そういうことで調べていくと、どうも環境の変化の温暖化と寒冷化で文明の生成と消滅があったり、王朝の生成と消滅があったり、それから覇者が交代したり、経済の変動が起きてくるということが考えられるわけです。そこでそういう古い時代、その歴史的な変化が起きた時に、一体何が起きたのだろうかということを調べてみました。
弥生、古墳、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、明治以降に至るまで、想定される気象変動はこのようにあったわけです。過去2000年間の平均気温からどのくらいずれていたか。そうすると聖徳太子の時代、飛鳥の時代には非常に温度が高く安定している。その後急速に下がるわけで、渤海の滅亡する時、温度が非常に下がります。大化の改新のところへ温度が下がってくるのです。ですから飛鳥からこの奈良に移る時に大きな変化があります。平安の時代は初期は非常に安定しているわけです。後期に変わります。それで鎌倉期はやはり急速に温度が下がるのです。これもまた不安定です。特にひどいのは、世界的な変動としてペストの大流行が起きる。これはヒョウショウ氷河期に入ってくるわけです。こういう歴史の上に温度の変化と歴史というのが非常に明確になってくることがわかります。
こういうことを現地をたくさん調査をしでいろいろ調べた結果、このシルクロードの町を細かく調べることができたわけです。これがシルクロードの対象地域で調べていったわけです。これが全体の調べる対象地域です。現地調査を行うために、このように例えばタシケントからサマルカンド、ブハラ、ウルゲンチ、ヌクスというふうに、大体1ヵ月以内で調査をして、シルクロード全体の調査をしました。例えばここでありますように、これがカスピ海、アラル海です。このあたりにどういうルートで行ったのだろうかということが推定されます。このあたりに、カスピ海とアラル海のあたりで、気象状態が常に変化をしているというのがよくわかるわけです。それを精密に調べると、このあたりの状況が非常に明確にわかります。
こういうデータをもとにして、衛星データで精密に測っていきますと、ここにあったのは、先ほど申し上げたように、かつてはこのあたりは緑がなかったところが緑が出てきた。そしてこのアラル海に入る水がなくなって、この湖が半分になった状況がわかったわけです。現在は非常に悲劇的な状態で、アラル海にはもう一匹の魚もいなくなってしまったわけです。こういう環境変化は有史以前にもあったわけですが、その時は人間の動きというよりも自然の動きでそうなったわけです。
こういうことを調べる時、ここにありますように、人工衛星から撮ったもので、どこにどういう植物があるかということを調べるわけです。それによってこの地域がどちらにたくさん水が供給されているかわかります。
それからこういうマップで、かつての記録の上に残っている状況、歴史的なポイントを調べることをやっています。
今度は現地にこういう観測のために調査隊を出して、このように観測したポイントはどこの場所で、緯度経度を出して、どういう状況になっているかを全部入れるわけです。その入れたものを現地へ行って調べて記録をして、こういうカードに残していくわけです。1ポイント、1ポイント、全部こういうカードに残しておくのです。
これは現状、何年何月にはここはこういう状況ですよということがあるわけです。先ほどお見せしたような状況も全部こういう記録に残します。
それで調査したところがここなのです。この場所はこういう状況になって、今にこの緑地で覆われてしまうだろうというのがわかります。

 

 

 

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